論語 季氏第十六(きし)

論語全文(漢文、訳) : 2014.09.07 Sunday

ここでは論語の第十六編 季氏第十六の漢文、読み仮名、現代語訳を紹介します。


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季氏第十六_01

季子
將伐顓臾
冉有季路
見於孔子曰
季氏
將有事於顓臾
きし
まさにせんゆをうたんとす
ぜんゆうきろ
こうしにまみえていわく
きし
まさにせんゆにことあらんとす
季孫氏が
顓臾の街を討伐しようとした
冉有と季路が
孔子に会い言った
季孫氏が
顓臾を討伐する事になった
孔子曰

無乃爾是過與
夫顓臾
昔者先王以
爲東蒙主
且在邦域之中矣
是社稷之臣也
何以伐爲
こうしいわく
きゅう
すなわちなんじこれあやまてることなきか
それせんゆは
むかしせんおうもって
とうもうのしゅとなせり
かつほういきのうちにあり
これしゃしょくのしんなり
なんぞうつことをもってなさん
孔子が言った
冉有よ
何かの間違いではないか?
顓臾は
昔に周王が認めた
東蒙の山の
祭祀を司る一族の
属領だ
どうして討伐する必要があるか?
冉有曰
夫子欲之
吾二臣者
皆不欲也
孔子曰

周任有言

ぜんゆういわく
ふうしこれをほっす
われにしんのものは
みなほっせざるなり
こうしいわく
きゅう
しゅうじんいえるあり
いわく
冉有が言った
季孫のお考えです
我々家臣が
望んだ事ではありません
孔子が言った
冉有よ
昔の周任が言った
言葉に
陳力就列
不能者止
危而不持
顛而不扶
則將焉用彼相矣
且爾言過矣
虎兕出於柙
龜玉毀於櫝中
是誰之過與
ちからをのべてれつにつき
あたわざればやむと
あやうくしてじせず
くつがえりてたすけずんば
すなわちはたいずくんぞかのしょうをもちいん
かつなんじのげんあやまてり
こじこうよりいで
きぎょくとくちゅうにやぶれなば
これたれのあやまちぞ
全力を尽くし家臣の義務を果たし
果たせぬ時は職を辞すとある
主君の危機に
助けないならば
どうやって義務を果たすのだ
あなたは勘違いをしている
檻の中の猛獣が逃げ出し
箱の中の宝石が壊れたら
誰の責任になるのだ?
冉有曰
今夫顓臾
固而
近於費
今不取
後丗必爲子孫憂
ぜんゆういわく
いまかのせんゆは
かたくして
ひにちかし
いまとらずんば
こうせいかならずしそんのうれいとならん
冉有が言った
顓臾は
堅固に軍備を整え
季孫氏の領有する費の近くにある
今討伐しないと
後世の子孫たちに心配事を残す
孔子曰

君子疾夫舎曰欲之
而必爲之辭
丘也聞
有國有家者
不患寡而
患不均
不患貧而
患不安
こうしいわく
きゅう
くんしはかのこれをほっすというをおきて
かならずこれがじをなすをにくむ
きゅうやきく
くにをたもちいえをたもつものは
すくなきをうれえずして
ひとしからざるをうれう
まずしきをうれえずして
やすからざるをうれうと
孔子が言った
冉有よ
人格者は望んでいるといわないで
言い訳する者を憎む
私はこんな言葉を聞いた事がある
国を保ち家を保つ者は
少なさを心配せず
等しくないことを心配し
貧しいことを心配せず
安らかでないことを心配すると
蓋均無貧
和無寡
安無傾
夫如是
故遠人不服
則脩文徳
以來之
既來之
則安之
今由與求也
相夫子
遠人不服
而不能來也
邦文崩離析
而不能守也
而謀動干戈於邦内

吾恐季孫之憂
不在顓臾
而在蕭牆之内也
けだしひとしければまずしきことなく
わすればすくなきことなく
やすければかたむくことなし
それかくのごとし
ゆえにえんじんふくせざれば
すなわちぶんとくをおさめて
もってこれをきたす
すでにこれをきたせば
すなわちこれをやすんず
いまゆうときゅうや
ふうしをたすけ
えんじんふくせずして
しかもきたすことあたわず
くにぶんほうりせきして
しかもまもることあたわざるなり
しこうしてかんかをほうないにうごかさんとはかる
われきそんのうれいは
せんゆにあらずして
しょうしょうのうちにあらんことをおそるるなり
等しいときは貧しいことがなく
和すれば少ないことがなく
安らかであれば傾くことがない
このようにすればよい
遠国の人々が服従しないときは
文徳を修めて
来させ
すでに来させたときは
安定させてやる
今、子路と冉有は
季氏を助けながら
遠国の人々が服従させられず
来させることができず
国家が分離しても
守ることもできない
軍隊を国内で動かそうと謀っている

わたしは季孫の憂いは
顓臾ではなく
彼の家臣の中にあることを恐れている

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季氏第十六_02

孔子曰
天下有道
則禮樂征伐
自天子出
天下無道
則禮樂征伐
自諸侯出
自諸侯出
蓋十丗
希不失矣
自大夫出
五丗
希不失矣
陪臣執國命
三丗
希不失矣
天下有道
則政不在大夫
天下有道
則庶人不議
こうしいわく
てんかにみちあれば
すなわちれいがくせいばつ
てんしよりいず
てんかにみちなければ
すなわちれいがくせいばつ
しょこうよりいず
しょこうよりいずれば
けだしじっせいにして
うしなわざることまれなり
たいふよりいずれば
ごせいにして
うしなわざることまれなり
ばいしんこくめいをとれば
さんせいにして
うしなわざることまれなり
てんかにみちあれば
すなわちまつりごとたいふにあらず
てんかにみちあれば
すなわちしょじんぎせず
孔子が言った
天下に道があれば
礼法や音楽や異民族の征伐は
天子から起こる
天下に道が無ければ
礼法や音楽や異民族の征伐は
諸侯から起こる
諸侯から起こった場合
10世代以上続く事は
少ない
諸侯に仕える大臣達から起こった場合
5世代以上続く事は
少ない
さらにその家臣達から起こった場合
3世代以上続く事は
少ない
天下に道があれば
大臣達が政治権力を握ることなどない
天下に道があれば
民衆が政治に文句を言う事もない

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季氏第十六_03

孔子曰
禄之去公室
五丗矣
政逮於大夫
四丗矣
故夫三桓之子孫
微矣
こうしいわく
ろくのこうしつをさること
ごせいなり
まつりごとのたいふにおよぶこと
しせいなり
ゆえにかのさんかんのしそんは
びなり
孔子が言った
魯の公室が人事権を失い
5世代になる
大臣達が政治の実権を握り
4世代になる
だから実権を握る三桓氏の子孫の
力は衰退していく

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季氏第十六_04

孔子曰
益者三友
損者三友
友直
友諒
友多聞
益矣
友便辟
友善柔
友便佞
損矣
こうしいわく
えきしゃさんゆう
そんしゃさんゆう
ちょくをともとし
りょうをともとし
たぶんをともとするは
えきなり
べんぺきをともとし
ぜんじゅうをともとし
べんねいをともとするは
そんなり
孔子が言った
良い友人には3種類ある
悪い友人にも3種類ある
正直な友
誠実な友
博識な友は
良い友人だ
見栄っ張りな友
媚びへつらう友
口達者な友は
悪い友人だ

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季氏第十六_05

孔子曰
益者三樂
損者三樂
樂節禮樂
樂道人之善
樂多賢友
益矣
樂驕樂
樂佚遊
樂宴樂
損矣
こうしいわく
えきしゃさんらく
そんしゃさんらく
れいがくをせっするをたのしみ
ひとのぜんをいうをたのしみ
けんゆうおおきをたのしむは
えきなり
きょうらくをたのしみ
いつゆうをたのしみ
えんらくをたのしむは
そんなり
孔子が言った
良い楽しみには3種類ある
悪い楽しみにも3種類ある
礼法と音楽を楽しむ事
他人の美点を褒める事
優れた友人との交際を楽しむ事は
良い楽しみだ
傲慢に振舞う事
怠惰に暮らす事
酒宴にふける事は
悪い楽しみだ

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季氏第十六_06

孔子曰
侍於君子有三愆
言未及之而言
謂之躁
言及之而不言
謂之隱
未見顏色而言
謂之瞽
こうしいわく
くんしにじするにさんけんあり
げんいまだこれにおよばずしていう
これをそうという
げんこれにおよびていわず
これをいんという
いまだがんしょくをみずしていう
これをこという
孔子が言った
君子に仕える時にしがちな過ちが三つある
言うべきで無い時に余計な事を言うのを
躁と言う
言うべき時に必要な事を言わないのを
隠と言う
君子の顔色も見ないで自分勝手に言うのを
瞽と言う

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季氏第十六_07

孔子曰
君子有三戒
少之時
血氣未定
戒之在色
及其壯也
血氣方剛
戒之在鬭
及其老也
血氣既衰
戒之在得
こうしいわく
くんしにさんかいあり
わかきときは
けっきいまださだまらず
これをいましむることいろにあり
そのそうなるにおよびてや
けっきまさにごうなり
これをいましむることとうにあり
そのおいるにおよびてや
けっきすでにおとろう
これをいましむることうるにあり
孔子が言った
人格者には三つの戒めがある
若い時には
血気や感情が不安定だから
色欲を抑制せねばならない
壮年期には
血気盛んになるので
闘争心を抑制せねばならない
老いると
血気は衰えてくるが
得たものへの執着やさらに得たいと思う欲望を抑制せねばならない

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季氏第十六_08

孔子曰
君子有三畏
畏天命
畏大人
畏聖人之言
小人
不知天命
而不畏也
狎大人
侮聖人之言
こうしいわく
くんしにさんいあり
てんめいをおそれ
たいじんをおそれ
せいじんのげんをおそる
しょうじんは
てんめいをしらずして
おそれざるなり
たいじんになれ
せいじんのげんをあなどる
孔子が言った
人格者は三つのものを畏れ敬う
天の意志を畏れ
徳の優れた偉大な人を畏れ
聖人の言葉を畏れる
つまらない人間は
天の意志を理解できず
畏れ敬う事も無く
偉大な人になれなれしくし
聖人の言葉を侮る

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季氏第十六_09

孔子曰
生而
知之者上也
學而
知之者次也
困而
學之又其次也
困而不學
民斯爲下矣
こうしいわく
うまれながらにして
これをしるものはじょうなり
まなびて
これをしるものはつぎなり
くるしみて
これをまなぶはまたそのつぎなり
くるしみてまなばざるは
たみにしてこれをげとなす
孔子が言った
生まれつきの
物知りは最も良い
学んで
物知りとなった者は次に良い
努力して
学んでいる最中の者は次に良い
努力もせずに学びもしない者は
人として最低だ

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季氏第十六_10

孔子曰
君子有九思
視思明
聽思聰
色思温
貌思恭
言思忠
事思敬
疑思問
忿思難
見得思義
こうしいわく
くんしにきゅうしあり
みるにはめいをおもい
きくにはそうをおもい
いろはおんをおもい
かたちはきょうをおもい
げんはちゅうをおもい
ことはけいをおもい
うたがいにはとうをおもい
いかりにはなんをおもい
うるをみてはぎをおもう
孔子が言った
人格者には九つの心掛けがある
物事をはっきり視る事
人の話は詳細に聞く事
温和な表情を保つ事
恭しい態度を保つ事
誠実に話す事
慎重に仕事をなす事
不確かな事は確認する事
怒る前に後の事を考える事
利益を得る前に道理に適っているか考える事だ

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季氏第十六_11

孔子曰
見善如不及
見不善如探湯
吾見其人矣
吾聞其語矣
隱居以求其志
行義以達其道
吾聞其語矣
未見其人也
こうしいわく
ぜんをみてはおよばざるがごとくし
ふぜんをみてはゆをさぐるがごとくす
われそのひとをみる
われそのごをきく
いんきょしてもってそのこころざしをもとめ
ぎをおこないてもってそのみちをたっす
われそのごをきく
いまだそのひとをみざるなり
孔子が言った
善行は手が届かないかのように追求し
悪行は熱湯に手を入れるように避ける
私はそんな人物に会った事もあるし
私はそんな話を聞いた事もある
隠居して理想を求め
正義を実践して理想を達成している
私はそんな話を聞いた事はあるが
そんな人物を見た事が無い

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季氏第十六_12

誠不以富
亦祇以異
齊景公有馬千駟
死之日
民無徳而称焉
伯夷叔齊
餓于首陽之下
民到于今称之
其斯之謂與
まことにとみをもってせず
またただいをもってす
せいのけいこうにはうませんしあり
しするのひ
たみとくとしてしょうするなし
はくい・しゅくせいは
しゅようのもとにうう
たみいまにいたるまでこれをしょうす
それこれのいいか
人間の価値は富とは
違うもので決まると詩経にあるが
斉の景公は馬4000頭も飼うほど裕福だったのに
彼が死んだ時に
人々は少しも称賛しなかった
伯夷・叔斉は
首陽山で餓死したが
人々は今でも彼らを称賛している
詩経はこの事を言ってるのだ

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季氏第十六_13

陳亢問於伯魚曰
子亦有異聞乎
對曰
未也
嘗獨立
鯉趨而過庭

學詩乎
對曰
未也
不學詩
無以言
鯉退而學詩
ちんこうはくぎょにといていわく
しもまたいぶんあるか
こたえていわく
いまだし
かつてひとりたつ
りはしりてにわをすぐ
いわく
しをまなびたるか
こたえていわく
いまだし
しをまなばざれば
もっていうことなしと
りしりぞきてをまなぶ
陳亢が伯魚に尋ねた
孔子から何か特別な事を教わりましたか?
鯉(伯魚)が答えた
特別な事は何も教わっていません
ある日父上が一人で庭におられた時
私がその前を小走りで通り過ぎました
孔子が言った
詩はもう学んだか?
鯉が答えた
まだです
孔子は、詩を学ばなければ
一人前に話す事はできないと言った
鯉は退き、詩を学ぶ事にした
他日又獨立
鯉趨而過庭

學禮乎
對曰
未也
不學禮
無以立
鯉退而學禮
たじつまたひとりたつ
りはしりてにわをすぐ
いわく
れいをまなびたるか
こたえていわく
いまだし
れいをまなばざれば
もってたつなしと
りしりぞきてれいをまなぶ
別の日に父上が一人で庭におられた時
鯉がその前を小走りで通り過ぎました
孔子が言った
礼はもう学んだか?
鯉が答えた
まだです
孔子は、礼を学ばなければ
一人前に振舞う事はできないと言った
鯉は退き、礼を学ぶ事にした
聞斯二者
陳亢退而喜曰
問一得三
聞詩聞禮
又聞君子之遠其子也
このにしゃをきけり
ちんこうしりぞきてよろこんでいわく
いちをといてさんをえたり
しをききれいをきき
またくんしのそのこをとおざくるをきけり
私(鯉)が聞いたのはこの二つです
陳亢は部屋出た後に大喜びで言った
一つの質問で三つの教訓を得た
詩の事、礼の事、
人格者は自分の子供を特別扱いしないという事だ

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季氏第十六_14

邦君之妻
君稱之曰夫人
夫人自稱
曰小童
邦人稱之
曰君夫人
稱諸異邦
曰寡小君
異邦人稱之亦
曰君夫人
ほうくんのつま
きみこれをししょうてふじんといい
ふじんみずからしょうして
しょうどうという
ほうじんこれをしょうして
くんふじんという
これをいほうにしょうして
かしょうくんという
いほうのひとこれをしょうしてまた
くんふじんという
君主の妻を
君主は夫人と呼ぶ
彼女は自分の事は
小童と呼ぶ
領民は彼女を
君夫人と呼ぶ
異国の人々に対しては
寡小君と呼ぶ
異国の人々も
君夫人と呼ぶ



論語全文(漢文、訳)   論語の概要
学而第一 為政第二 八佾第三 里仁第四 公冶長第五   孔子と論語 論語の本と漫画
雍也第六 述而第七 泰伯第八 子罕第九 郷党第十   論語の登場人物
先進第十一 顔淵第十二 子路第十三 憲問第十四 衛霊公第十五   論語の時代背景
季氏第十六 陽貨第十七 微子第十八 子張第十九 堯曰第二十   論語の用語集